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小児の耳鼻科疾患

小児の耳鼻科疾患について

小児の耳鼻科疾患についてお子さんにとって耳、鼻、のどの症状は日常的にみられます。風邪をこじらせて鼻副鼻腔炎や中耳炎を発症することは非常に多く、予防的あるいは早期に適切な対応をしていくことが重要です。一方で、安易な抗生剤投与は耐性菌の出現や症状の難治化を引き起こすため避けなければなりません。また、鼻炎・副鼻腔炎の慢性化や扁桃・アデノイド肥大は、不快感や気道狭窄に伴う睡眠障害や集中力の低下の原因にもなり、お子さんの発達・行動・学習面などに影響する可能性もあります。したがって、これらの症状は放置せず、早めにご相談ください。


小児耳鼻科で
よく見られる症状

耳の症状

  • 頻繁に耳を触る仕草がある
  • 耳に触れると嫌がられる
  • 普段より機嫌が悪い様子がある
  • 話しかけても反応が遅い
  • 会話の途中で聞き返されることがある
  • 話し声が大きい
  • 以前よりもテレビのボリュームを大きくする
  • 無音なのに音を感じているような仕草がある
  • こちら側に片耳を向けて会話する仕草がある
  • 耳にかゆみを感じている
  • 耳垢がよく詰まる

など

鼻の症状

  • 鼻水
  • 鼻づまり
  • くしゃみ
  • 鼻声
  • 鼻をよく掻く
  • 鼻血をよく出す
  • 緑色の鼻水が出る
  • 鼻を頻繁に触る

など

のどの症状

  • のどの痛みや違和感
  • 咳、痰が多い
  • いびきを掻く
  • 頻繁にむせる
  • 睡眠時に無呼吸状態がある
  • 扁桃が腫れる
  • 食事の時間が長い

など


小児耳鼻科でよくある疾患

  • 急性中耳炎
  • アレルギー性鼻炎
  • 副鼻腔炎(蓄膿症)
  • 耳垢塞栓
  • 先天性耳瘻孔
  • 先天性鼻涙管閉鎖
  • 扁桃肥大
  • アデノイド肥大

など

急性中耳炎

鼓膜の内側にある空間(中耳腔)に細菌やウイルスが侵入し、感染を引き起こす疾患です。中耳炎になると、耳の痛み、聞こえにくさ、発熱などの症状を伴います。中耳腔はのどの上部と「耳管」と呼ばれるトンネルでつながっています。風邪をひいて鼻やのどに炎症が生じた際に、この耳管を通って中耳腔に菌が侵入し発症することが多いです。子ども、特に3歳以下では急性中耳炎の発症率が高いですが、耳管が大人と比べて太く短く、向きがより水平に近く機能も未熟なため、菌が侵入しやすいことが原因と考えられています。中耳炎は決して耳の外から水が入ったり、耳掃除をしないから起こすわけではありません。幼少児は抗生剤を使用せずに自然に改善することも多いですが、放置すると滲出性中耳炎に移行する可能性もあるため、しっかりと評価、治療していくことが重要です。

アレルギー性鼻炎

ダニやハウスダスト、花粉などのアレルゲン(アレルギー症状の原因物質)により、鼻粘膜で過剰な免疫反応が生ずることで起こす疾患です。幼児期後半以降が多いですが、最近はより低年齢で発症することも多くなり、子どもの発症率も増加傾向にあります。
主な特徴は、くしゃみ、透明な鼻水、鼻づまりで、目のかゆみや涙目を併発することもあります。治療はアレルギーを抑える、抗ヒスタミン薬やステロイド薬の点鼻などがありますが、ダニやスギ花粉などにアレルギーがある場合、舌下免疫療法が適応となります。

副鼻腔炎

副鼻腔炎鼻腔を取り囲むように位置する顔の骨の内部にある空洞です。篩骨洞・上顎洞・蝶形骨洞・前頭洞という名前がついていおり、小児ではこの順に年齢とともに発達します。すべて鼻腔とつながっていいて、しばしば風邪などの引き続いて、副鼻腔内にウイルスや細菌が感染することで副鼻腔炎が発症します。大半はウイルス性であり、安易な抗生剤治療は避けるべきです。細菌性は、ウイルス性鼻炎やアレルギー性鼻炎によって、副鼻腔から鼻腔への細菌の排泄経路が塞がってしまった場合にのみ起こり、抗生剤治療が必要なことがあります。副鼻腔炎が慢性化すると慢性副鼻腔炎、俗に言う蓄膿症となります。特に、お子さんでは鼻炎症状が長引きやすいため、鼻腔吸引や適切な投薬などの鼻炎治療が頑固な副鼻腔炎を予防するポイントです。早めの受診を心掛けましょう。

耳垢塞栓
(じこうそくせん)

外耳道に耳垢(じこう、みみあか)が詰まった状態を指します。
耳垢は、外耳道の分泌物、剥がれ落ちた皮膚、ほこりなどで出来ますが、通常は自然に耳の外に排出されます。しかし、耳そうじなどで耳垢を奥へ押し込んでしまう、耳垢の多い体質で多量に溜まってしまう、入浴・プールなどで水が侵入し耳垢が膨張してしまうなどで耳垢塞栓の状態に至ることがあります。
主な症状は、難聴、耳閉感、痛みや痒み、耳鳴りなどですが、自覚症状のない場合もあります。
詰まった耳垢は、時間とともにやがて排出されることがほとんどですが、音が聞こえにくい状態が長く続いたり、自覚症状が強い場合などには、耳鼻科で耳垢除去をすることをお勧めします。なお、耳垢除去は当院でも対応しますのでお気軽にご相談ください。
なお、家庭での耳そうじは、幼少児の場合は外耳道が細く難しため積極的には不要です。年長児以上でご家庭で行う場合、月に1~2回、耳の穴の入口あたりを軽く拭く程度に止めましょう。無理に奥まで掃除しようとすると感染を起こしやすくしたり、外耳道を傷つけて外耳道炎を起こすリスクがあります。

先天性耳瘻孔
(じこうろう)

母親の胎内で耳介が形成されるときに、何らかの原因で耳介やその周辺に小さな穴が残ってしまった状態です。深さや形は様々で、発症率は1〜8%と特に珍しいものではありません。
無症状の場合、特に治療は不要です。しかし、穴の中に皮脂腺からの分泌物が溜まって粥腫(じゅくしゅ)のような状態となると、押すとどろどろした白濁物が出て、独得の悪臭を伴います。さらに、赤く腫れたり痛みが生じた場合は細菌感染の可能性がありますので、抗生剤での治療や、排膿により改善します。感染を繰り返す場合は、原因である瘻孔部を切除する必要がなりますので、耳鼻科にご相談ください。

先天性鼻涙管閉鎖
(先天性鼻涙管閉塞)

涙は目尻側にある涙腺などで作られ、しばらく目の表面に留まった後、目頭側にある涙点から涙囊に流れ、さらに鼻涙管を通って鼻腔内へ排出されます。この鼻涙管に薄い膜状のものが残り、生まれつき塞がっている症状が先天性鼻涙管閉鎖です。
新生児では最大20%程度にみられ、80〜90%は1歳まで自然治癒していきます。
主な症状は目やに、涙目、流涙で、時に涙囊に細菌が感染を引き起こし(涙囊炎)、目頭の内側が腫れることもあります。
治療は、目やにがひどい時に一時的に抗生剤の目薬を使うことがあります。また、涙嚢部のマッサージが有効な可能性が報告されていますが、家庭で行うのは難しく、一律には勧められません。
涙囊炎を起こしたり、1歳すぎても流涙が改善しない場合などには、専門の眼科医による閉塞部の解放が必要になりますので、適切な医療機関を紹介致します。

扁桃肥大

何らかの原因で口蓋扁桃(扁桃腺)が肥大した状態を言います。
口蓋扁桃はリンパ組織の一種で、咽の入り口の両側に1つずつ存在します。
主な症状は、いびき、睡眠時無呼吸(息が止まる)、飲み込みにくさ、などが挙げられます。生理的にも幼児期から学童期はじめ頃に大きくなり、その後は退縮傾向がみられます。肥大があっても症状が軽ければ治療の必要はありませんが、症状が悪化した場合には扁桃摘出手術を行うこともあります。専門的な判断が必要な場合は、適切な医療機関を紹介致します。

アデノイド肥大

咽頭扁桃(アデノイド)が肥大した状態を言います。
咽頭扁桃は、口蓋扁桃と同じくリンパ組織の一種で、鼻の奥の突き当たり、つまり、のどの一番上部である上咽頭に存在します。この部位は口を開けても外から直接見ることができないため、観察するためには耳鼻科で内視鏡を鼻から挿入して確認します。主な症状は、鼻づまり、鼻声、口呼吸、中耳炎を繰り返す、睡眠時無呼吸(息が止まる)、いびき、などが挙げられます。生理的には幼児期に大きくなり、学童期以降は退縮傾向がみられます。肥大があっても症状が軽ければ治療の必要はありませんが、特に呼吸や睡眠障害が悪化した場合にはアデノイド切除手術を行うこともあります。専門的な判断が必要な場合は、適切な医療機関を紹介致します。