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予防接種

予防接種について

赤ちゃんは、生まれた後しばらくは母親から受け継いだ免疫で、さまざまな病原菌から体を守っています。この免疫は時間とともに失われ、例えば百日咳は生後3か月までに、はしか(麻しん)は1歳頃までにはなくなるとされています。その後は、お子さん自身が免疫をつくり、感染症に強い体を作っていく必要があります。一方で、感染症は特に重篤になると命に関わることもあります。また、感染力の強いものでは、公衆衛生や医療上の問題点も大きくなります。このような感染症に対して、発症前にお子さんが免疫を獲得し、感染症の発症、あるいはかかってしまった場合には重症化を回避したり、自身が病原菌を他に広げていかないようにするのが予防接種です。お子さんは成長とともに外出機会が増え、それに伴いさまざまな病原菌と接触する機会も増えてきます。ワクチンで防げる病気はVPD(vaccine preventable diseases)と呼ばれ、受けるべきワクチンの種類や接種する時期には、それぞれ理由があります。お子さんの健康を守るため、予防接種に関して正しく理解していきましょう。


予防接種を受ける際に必要なもの

  • 母子健康手帳
  • 予防接種予診票(定期接種の場合、自治体から送付されているもの)
  • 健康保険証・乳幼児医療証(初回来院や診察を希望される場合)

予防接種を受けられないケース

  • 37.5℃以上の発熱がある場合
  • 予防接種予診票を忘れた方(定期接種の場合)
  • その他、医師の問診・診察で接種不可と判断された場合

予防接種の種類について

予防接種には、予防接種法で定められ市区町村が主体となり、公費で実施できる定期接種と、希望者が自費で受ける任意接種とがあります。定期接種にはロタウイルス、肺炎球菌、五種混合(令和5年3月までに接種を開始した方はヒブ+四種混合)、B型肝炎、BCG、麻疹風疹(MR)、水痘、日本脳炎、子宮頸がんの各ワクチンが、任意接種にはムンプス(おたふくかぜ)、インフルエンザワクチンなどが含まれます。どちらも重要ですが、とくに定期接種は公費で接種できる年齢が規定されています。体調不良など特別な理由がなければ、できるだけ推奨されるスケジュールに従って接種を受けて頂けるよう、お願い致します。ご不明な点がありましたら、お気軽にご相談ください。


予防接種のスケジュール

推奨予防接種スケジュール

複数の予防接種の同時接種について

複数の予防接種を同日に接種することは、有効性や副作用のリスクの観点からも、基本的には問題ありません。特に生後3か月から始まる定期予防接種は多くのワクチンを接種していく必要がありますので、日本小児科学会も同時接種を推奨しています。もちろんご希望があれば、予防接種を一つずつ接種していくことも可能です。

対象年齢

定期接種には、定期接種の推奨期間と、定期接種の接種可能な期間とが記載されています。推奨期間に接種することが望ましいですが、何らかの事情でそれ以外の時期に接種をする場合にも、接種可能な期間であれば公費での接種が可能です。

キャッチアップ接種について

何らかの事情でそれぞれ標準的な接種時期に接種を受けられなかった場合など、それ以外の時期に接種を受けることをキャッチアップ接種と呼んでいます。この場合、接種スケジュールや、費用負担など、予防接種の種類や、接種ができなかった状況などによって異なってきますので、自治体窓口や当院にご相談ください。なお、日本小児科学会が推奨するキャッチアップ接種の詳細は下記に記載されています。
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/catch_up_schedule20231122.pdf
現在、HPV(子宮頸がん)ワクチンについて、長期に続いた積極的な勧奨の差し控えにより接種機会を逃した方へのキャッチアップ接種が、2025年3月を期限に公費で行われています。詳細はHPVワクチンの項を参照ください。


予防接種の種類

Hib(ヒブ:ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型)ワクチン

インフルエンザ菌(ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型)という細菌による感染症を予防するワクチンです。冬に流行するインフルエンザウイルスとは異なります。この細菌は中耳炎、副鼻腔炎、肺炎などの代表的な原因の一つで、近年、抗生剤に抵抗を示す耐性菌が増えています。このワクチンが導入される前は、乳幼児期に重篤な後遺症や、時に命に関わるよこともある細菌性髄膜炎を引き起こすことが大きな問題となっていましたが、ワクチン導入後は劇的に減少しています。特に乳児期には細菌性髄膜炎に進行する可能性が高いとされていますので、お子さんを守るためにも、生後2か月になったら早期のワクチン接種が推奨されています。なお、2024年(令和6年)4月以降に接種を開始するお子さんは、五種混合ワクチンに含まれるようになったため、Hib単独でのワクチン接種は不要です。

(小児用)肺炎球菌ワクチン

肺炎球菌という細菌による感染症を予防するワクチンです。肺炎球菌も中耳炎、副鼻腔炎、肺炎などの代表的な原因の一つで、やはりインフルエンザ菌と同様、ワクチンが導入される以前には、特に乳幼児期に細菌性髄膜炎、敗血症といった重篤な感染症の原因になることが問題でした。したがって、お子さんを守るためにも、生後2か月になったら早期のワクチン接種が推奨されています。なお、これまで13価ワクチン(13種類の肺炎球菌に対するワクチン)でしたが、2024年(令和6年)4月からは15価ワクチンの接種が開始されています。すでに13価ワクチンで開始したお子さんでも、2回目以降の接種を15価ワクチンへ変更して問題ありません。

四種混合ワクチン(DPT-IPV)、(2024年(令和6年)4月以降は)五種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)

四種混合ワクチンはジフテリア菌、百日咳菌、破傷風菌、ポリオウイルスという4つの病原菌による感染症を予防するワクチンです。2024年(令和6年)4月以降に開始するお子さんでは、これらに前述したヒブ(インフルエンザ菌)ワクチンが追加された五種混合ワクチンとなります。ヒブ以外の感染症も、それぞれが発症すると重篤な症状や後遺症、生命の危険にも関わる疾患です。特に百日咳は成人でも問題となっており、乳児期早期に罹患する可能性が少なくなく、重症化リスクの高い疾患です。生後2か月になったら早期のワクチン接種が推奨されています。なお、これまで四種混合ワクチンで接種を開始したお子さんは、規定回数の接種が終了するまで、四種混合ワクチン+ヒブワクチンの接種となります。なお、就学時に百日咳やポリオへの抵抗力が低下を防ぐ目的で、就学前に三種混合ワクチン(ジフテリア菌、百日咳菌、破傷風菌)や単独での不活化ポリオワクチンの追加接種も推奨されています。ただし、これらは定期接種には入っていませんので、自費での接種となります。

BCGワクチン

BCGは結核を予防するためのワクチンです。結核は昔の病気と思われがちですが、現在でも年間10,000人以上が発症し、約1,600人以上が命を落としています。特に乳幼児が結核菌に罹患し、感染が成立した場合、髄膜炎や粟粒結核と呼ばれる重症結核に進展しやすいため、生後5か月、遅くとも乳児期(1歳未満)での接種を受けるようにしてください。BCGは9つの針のついた判子状の注射器で2箇所、上腕外側部皮内(皮膚表面)に接種します。接種後は10日目前後から徐々に針跡の部分が赤く腫れてきますが、接種後数日程度ですでに赤く腫れたり化膿している場合は「コッホ現象」と呼ばれています。この場合、結核に罹患している可能性を鑑別する必要がありますので、接種した医療機関を受診してください。なお、BCGワクチンは、本人や近親者に免疫不全症の診断がある場合や、他疾患の治療などで免疫が抑制されている場合など、注意が必要ですので、主治医に確認の上、お気軽にご相談ください。

MR(麻しん風しん混合)ワクチン

MRワクチンは麻しんウイルスと風疹ウイルスによる感染症を予防するワクチンです。麻しんは一般的にはしかとも呼ばれ、感染力が非常に強く、発症した場合には重症化しやすく、死亡率は1000人に1人と言われています。また、生後早期に麻しんに罹患した場合、成長とともに中枢神経が障害される亜急性硬化性全脳炎と呼ばれる、大変重篤な病気を発症することがあります。風しんは、三日はしかとも呼ばれ、成人になって発症すると重症化しやすい傾向があります。特に妊娠初期に母体が感染すると、胎児に先天性風しん症候群と呼ばれる、心臓や目、耳などに障害を生じる病気を発症することがあります。MRワクチンの有効性は極めて高く、どちらもしっかりと予防する必要がありますので、お子さんが1歳になったらできるだけ早く接種し、小学校就学前の年度に2回目の接種を受けてください。

HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン(子宮頸がんなどの予防)

子宮頸がんをはじめとした、ヒトパピローマウイルス(HPV)に起因する疾患(全てではない)を予防するワクチンです。子宮頸がんは、20〜30歳台に発症ピークがあり、毎年10,000~15,000人が発症し、約3000人が亡くなっている病気です。日本では長期にHPVワクチンの積極的接種の勧奨差し控えが行われ、ワクチンで予防できたはずの子宮頸がんに罹患した方が多くいらっしゃいます。有効性は世界的に確認されており、子宮頸がんのみならず、HPV感染自体や前がん病変の発生を予防する効果も報告されています。公費の対象は小学6年から高校1年生に相当する年齢の女子で、標準時期は中学1年時です。また、積極的な接種の勧奨差し控えにより接種機会を逃した方へのキャッチアップ接種が、2025年3月を期限に公費で行われています。①平成9年度~平成19年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日)の女性、②過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない、の条件を満たす方が対象です。ワクチンは3種類あり、標準的には3回接種しますが、シルガードと呼ばれるワクチンでは、15歳未満で初回接種した場合は2回接種で終了可能です。

水痘(水ぼうそう)ワクチン

水ぼうそうを予防するワクチンです。原因となる水痘・帯状疱疹ウイルスは、初回の感染で水ぼうそうを発症した後、体内に潜伏し、体調不良などをきっかけに帯状疱疹として再度でてくることがあります。また、水ぼうそうにかかった場合、周囲への感染力も強く、重症化すると、肺炎、脳炎などを合併することもあります。1歳になったらなるべく早い時期に、MRワクチンと同時に接種しましょう。なお、1回のみの接種では、数年以内に20~50%が水痘を発症するという報告もあります。したがって、標準的には初回接種の半年後2回目の接種を受けるようにしましょう。

B型肝炎ワクチン

B型肝炎ウイルスの感染を予防するワクチンです。B型肝炎は日本では現在も約100万人の患者がいると推定されています。B型肝炎は一時的な感染と持続的に感染し続けることによる慢性肝炎とがあります。乳幼児期に感染し、慢性肝炎になった場合には、将来的に肝硬変や肝臓がんなど、生命に関わる重篤な病気を引き起こす可能性があります。B型肝炎ワクチンは、母親がB型肝炎ウイルスのキャリアであった場合に、母子感染を予防する場合と、それ以外の感染を予防するための定期接種とがあります。定期接種では、生後2か月から、五種混合ワクチン、肺炎球菌ワクチンとの同時接種が推奨されています。

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎/ムンプス)ワクチン

おたふくかぜの原因であるムンプスウイルスの感染を予防するワクチンです。ムンプスウイルスにかかると、両耳の下あたりにある耳下腺が腫れておたふくかぜを発症しますが、髄膜炎(頭痛や吐き気)、難聴、膵炎、脳炎、精巣炎などの合併症を引き起こすこともあります。このワクチンは定期接種には入っていないため自費での接種が必要ですが、1歳になったら早めに1回目の接種を行い、小学校入学前の1年間(5-6歳)で2回目の接種を受けるよう推奨します。MRワクチンと同時接種で行うといいでしょう。

日本脳炎ワクチン

日本脳炎ウイルスの感染を予防するワクチンです。日本脳炎ウイルスは豚から蚊を媒介してヒトに感染します。感染しても発症することは少ないですが、発症すると高い致死率の重篤な病気です。ワクチンが広がり日本では少ないですが、毎年少数例の発症が報告されて、ウイルスをもつ豚も少なくないと推定されています。また、アジア諸国など海外では多くの患者さんが報告されています。したがって、3歳になったらしっかりと接種を開始することが大切です。

二種混合ワクチン(DT)

上記の四種(五種)混合ワクチンのうち、ジフテリア菌、破傷風菌に対する免疫を高めるために行うワクチンです。百日咳菌への免疫を合わせて高めるため、三種混合ワクチンに置き換えて接種することも推奨されていますが、この場合は自費での接種となります。

インフルエンザワクチン

任意接種のため自費にはなりますが、生後6か月から接種が可能です。13歳未満は2〜4週間かくで2回、13歳以上は1回接種です。毎年10月、11月頃から接種しましょう。


予防接種の費用

定期予防接種は無料です。予診票を必ずお持ちください。ただし、定期接種で接種可能な年齢以外での接種や、事前申請なく自治体が指定する医療機関以外で接種を受けた場合は、任意接種扱いとなり有料となりますのでご注意ください。

※注意事項
予診票に記載漏れや記載間違いがあると、適切な予防接種を受けられなくなることがあります。場合によっては任意接種扱いとなり有料となりますので、ご注意ください。


予防接種でよくあるQ&A

予防接種後の副反応にはどのようなものがありますか?

注射した部位の軽い赤みや腫れ、痛み、しこりや、接種後数日以内の発熱といった軽度のものから、接種後短期間生ずる強いアレルギー反応(アナフィラキシー)のような強いものまでさまざまです。このようなアレルギー反応の確認のため、接種後はしばらく院内で待機して頂くことがあります。ただし、副反応の多くは軽いものであり、数日程度で治療せず改善していきます。また、一般的な定期接種や任意接種によって重篤な副反応を引き起こすことはほとんどありませんが、ご不安がありましたらお気軽にご相談ください。

予防接種後に接種した部位が腫れていますが、受診した方が良いですか?

接種部位の腫れは、よくみられる副反応の一つです。数日程度で改善することが大半ですので、通常は様子をみて頂いて問題ありません。ただし、腫れや痛み、不快感が強い場合やご不安な場合には、遠慮なく受診してください。

予防接種後に発熱しました。受診した方が良いですか?

予防接種後2〜3日以内の発熱は、よくみられる副反応の一つです。生後2〜3か月での五種混合ワクチンなどを接種した夜などに発熱することは稀ではありません。活気があり、授乳や水分摂取などが問題なく可能であれば、通常はそのまま様子をみて頂ければ、翌日には解熱していることが多いです。ただし、発熱が半日〜1日以上持続する、活気や反応が悪い、感染症状(咳や呼吸が苦しそう、吐いているなど)がある場合には、早めに受診してください。

副反応の発熱は接種後、いつ頃起こりますか?

生ワクチン(MRワクチン、水痘ワクチンなど)の場合は数日〜数週後が多いです。不活化ワクチン(四種・五種混合ワクチン、肺炎球菌ワクチン、Hibワクチン、日本脳炎ワクチンなど)の場合は、ほとんどが接種後24時間以内に発熱して、48時間以内に改善します。

複数のワクチンを同時接種すると副反応が強くでたり効果が下がったりしませんか?

同時接種であっても、単独で接種した場合と比べて、副反応の強さや接種効果に違いはありません。一方、数多くの接種が推奨されている現在では、同時接種は受診回数が抑えられ、スケジュールが組みやすく、必要な免疫を早期に獲得できるというメリットがあり、日本小児科学会が推奨しています。

BCGを受けてから2~3日しか経っていませんが、針跡が赤く腫れてきました。受診は必要ですか?

通常、BCG接種後の患部の赤みは1~2日以内に消失し、10日~2週間頃から再び徐々に赤みや腫れ、化膿がみられるようになります。しかし、接種後数日ですでに腫れや赤み、化膿がみられる場合はコッホ現象と呼ばれ、結核に感染している可能性が否定できませんので、早めに受診してください。このような場合には、状態を確認し、必要があればツベルクリン反応や血液検査、レントゲンなどを行い、感染が確認された場合には治療を行う必要があります。

BCG接種後にわきの下が腫れてしこりができました。受診は必要ですか?

BCG接種によって、1%程度の頻度でわきの下にしこりが現れることがあります。腋窩リンパ節腫大と呼ばれ、通常は数ヶ月程度で自然に小さくなっていきます。ただし、一部は化膿したり自壊して排膿がみられる場合や、治療が必要となる場合もあります。したがって、このような症状がみられた場合には、お気軽にご相談ください。

予防接種した当日の入浴は可能ですか?

接種後1時間以上経過していて、体調がよければ入浴は問題ありません。接種部位を強く擦る・押す・揉むなどは控えましょう。

卵アレルギーがある場合、インフルエンザワクチンは接種しない方がいいでしょうか?

インフルエンザワクチンには、製造過程で鶏卵が使用されるため極微量の卵成分が残存していますが、通常は卵アレルギーがあっても接種は問題ありません。ただし、以前にアナフィラキシーを起こしたことがあるなど、重度の卵アレルギーがある場合、注意が必要なことがあります。ご不安な点があれば、お気軽にご相談ください。